お茶の間ブログ

労働関係を中心にゆるゆるとつぶやいていきます。

初の「過労死」国会答弁

初めて「過労死」の単語が出てきた国会っていつだったのか国会会議録システムで検索してみました。

それによると昭和54年2月21日の衆議院逓信委員会での渡辺秀夫議員の質疑で出てきたのが初めてのもののようです。

とはいえ、内容は全逓逓信省労働組合)による反マル生闘争とそれに係る逓信省の対応に関する質疑で、対応に当たっていた佐賀県の局長代理が残業後に帰宅した未明、急性心不全で亡くなった、という流れの中で出てきています。

文脈としては、全逓のせいで国民に迷惑がかかっている、全逓の闘争で死者(局長代理の過労死)まで出している、こんなことをする全逓はけしからん、厳しく対処せよ、というもので、まぁ今日的な労働者の過労死が問題であるというような内容ではありませんでした。

 

 

○渡辺(秀)委員 (略)御案内のように昨年十二月二十五日には、この闘争の中で、これは九州の出来事ですけれども、マル生運動で、「反マル生交渉」というふうに見出しがありますが、局長代理が過労死をした。死者まで出ている。一体こんな闘争がいままであったでしょうか。「佐賀県の郵便局局長代理が、残業を終えて帰った二十四日未明、急性心不全のため死亡した。」もともとこの人は心臓が弱かったのですけれども、しかし仕事が遅くまで続いてこれが響いたのではないかとはっきり書いてあります。この関係者はそのように認めている。これほど管理者は一生懸命にやっている。私は、こういうことに対して、許しておいてはいけないと思うのです。 

 

次に登場するのが昭和60年5月30日の衆議院内閣委員会での柴田睦夫議員の質疑です。

規制緩和の流れの中で、労働者の安全が守られないのではないか、さらに、労災隠しが全国で横行しているのではないか、という流れの中で千葉労働基準監督署管内の川崎製鉄所の千葉製鉄所に触れています。

曰く、千葉製鉄所は人権無視の労働環であり、労災が多発していて労災隠しもあるので、千葉労働局と千葉労働基準監督署に対して、ちゃんと公表、届け出をさせることと過労死を労働災害として認めるように申し入れたとのこと。

○柴田(睦)委員 例えば川崎製鉄所の千葉製鉄所でのことですけれども、ここではいわゆる人権無視の出向、配転、社外派遣などによる人減らし、合理化ということで、労働者の健康破壊が進んで、労働災害が頻発しております。これを会社側は、そのほとんどを私傷病扱いにして労災を表に出さないということをやっているわけです。私たちが調査した結果によっても、昨年までの三年間に定年前に死亡した労働者は川鉄全体で百六十五人、そのうち千葉製鉄所では六十一人に及んでおります。夜勤の連続で四十八歳の労働者がロッカーで倒れたまま急死する、これは八〇年の八月にありました。また、派遣先から復帰した三十九歳の労働者が会社のふろ場で倒れて死亡する、これは八四年の十月ですが、こうした過労による死亡も増加しているわけです。自殺者も頻発しまして、一昨年だけで八人もの労働者が自殺されて、自殺が重大な問題になっております。
 私は、この問題につきまして、去年の十月に千葉労働基準局と千葉労働基準監督署に対しまして、同製鉄所に勤務する労働者と一緒に行きまして、労働災害を私傷病にする災害隠しをやめさせて、ちゃんと届け出、公表させること、それから過労死は労働災害として扱うようにするようにということを申し入れましたが、労働省としてはその後どのような調査、指導を行われたか、そして調査の結果この労災隠しの実態はどうであったか、また会社側は労働省の指導に対して是正措置をどう講じたか、お伺いします。

 

その次が昭和60年12月10日の衆議院社会労働委員会での森田景一議員の質疑です。

これは今日まで続く過労死に係る労災認定基準についての質疑です。

昭和36年に認定基準に関する通達(昭和36年2月13日付け基発第116号「中枢神経及び循環器系疾患(脳卒中、急性心臓死等)の業務上外認定基準について」)を発出しているが、現在は当時とは労働環境も変わっており、この認定基準を見直す予定はないのか、と尋ねています。

労働省は、これから専門家に見直しの検討を行ってもらう段取りであると答弁しています。

労働省は昭和57年に「脳血管疾患及び虚血性心疾患等に関する専門家会議」を設置し、昭和62年9月の「過重負荷による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の取扱いに関する報告書」を受けて認定基準を改定し、昭和62年10月26日付け基発第620号「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」を発出しています。

○森田(景)委員 (略)次に、労災認定基準の見直しということについてお尋ねしておきたいと思います。
 過労死に対する労災の認定というのは非常に厳しいわけでございます。過労死は脳や心臓の病気、例えば脳出血とか心筋梗塞、こういう病気によるケースが多いために、不規則な仕事あるいはストレスが原因と見られていまして、特に原因がはっきりしないケースが多いようでございますが、管理職を中心とした中高年に多い、このように言われております。
 一般的に労災補償は、労働基準法に基づく施行規則の表に列挙されている病気につきまして個別の申請ごとに労働基準監督署が業務上かどうか、これを判断して認定が決められることになっております。ただし、脳出血心筋梗塞などはこの表には明示されておりません。過労死の労災認定は個別ごとのケースで判断する、こういうことになっておりまして、この判断の基準を、中枢神経、循環器系疾患、すなわち脳卒中、急性心臓死などの認定基準というものを昭和三十六年二月に労働基準局長通達でつくっているわけでございます。
 この内容は、一つは、業務上とする認定要件を「突発的な出来事やとくに過激な業務についたことによる精神的、肉体的負担があり、これらが発病の原因として医学的に認められること」こういうことになっておりまして、単なる疲労の蓄積だけでは認定できない、こういうのがあるわけでございます。
 それからもう一つは、高血圧症を持病として持っている人が脳出血を起こした場合も、特別な場合を除いて一般的には認められない、こういうふうになっております。
 また、第三点としまして、日常的に激しい仕事をしている人や長時間労働者も発病前に特に変わった業務がなければ認定は難しい、大体こういうことになっていると思いますね。
 高度経済成長の中で、技術革新で新たな緊張を強いられる仕事や交代制勤務がふえてきた。高齢化に伴う中高年サラリーマンのストレスというのは非常に激しくなっている、このように言われておるわけでございます。一方では、働き過ぎが脳や心臓の病気を引き起こすケースが目立ってきているわけでございます。こうした過労死の労災認定の実情というのはどのようになっているのでしょうか、お答えいただきたいと思います。
○小粥(義)政府委員 御指摘の過労死、特に脳卒中なり急性の循環器系疾患を私どもとらえておるわけでございますが、こうしたものが職場で仕事をやっている際に発生をするというケースがふえてきていることは事実でございます。(略)
 先日、一部の新聞に認定基準の見直しの作業を始めているという記事も出ました。これは五十七年以来専門家にお願いして、こうした面の取り扱いをどうしたらいいか、検討をお願いはしているところでございます。ただ、これは先生のお話にございましたように、基準法の施行規則三十五条で職業性の疾病全部掲げてございますが、その中へ初めから掲げられるような疾病たり得るかどうかという点については、やはり個人差が大きいということがそうした専門家の検討の結果でもはっきりと指摘をされております。したがって、ケース・バイ・ケースで判定せざるを得ない、こういうことになっているわけですが、そのケース・バイ・ケースの判定も、昭和三十六年に認定基準をつくってそれに基づいてやっておりますけれども、その後、成人病が非常にふえてきているといったようなこと、それから先生御指摘になったような労働の密度が前と比べれば非常に高くなっているじゃないかといったような事情から見て、果たして従来どおりでいいのかどうか、その辺の検討をこれから専門家によって見直しの作業をしてもらおう、こういう段取りにしているところでございます。