お茶の間ブログ

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「8割違反」は「2割合法」である

1月27日に、厚生労働省が「平成26年度「過重労働解消キャンペーン」の重点監督の実施結果」を公表しました。

 


平成26年度「過重労働解消キャンペーン」の重点監督の実施結果を公表 |報道発表資料|厚生労働省

 

 

この監督は「長時間の過重労働による過労死等に関する労災請求のあった事業場や、若者の「使い捨て」が疑われる事業場など、労働基準関係法令の違反が疑われる事業場に対して集中的に実施したもの」だそうです。

 

その結果としては、全体の8割で何らかの労働基準関係法令違反があり、全体の半数以上で「違法な時間外労働」が認められた、とのことです。

 

8割の事業場で違反があり、労働時間に限って見ても半数で違反があるとのことですが、これは逆に見れば2割の事業場では「合法」的な労務管理を行っており、労働時間管理について言えば半数の事業場で「合法」となっているとも言えます。

 

これは、平成25年の「若者の「使い捨て」が疑われる企業等への重点監督」でも同じことが言えるでしょう。

 


若者の「使い捨て」が疑われる企業等への重点監督の実施状況 |報道発表資料|厚生労働省

 

このときは「違法な時間外労働」を指摘しているのは半数にも満たない結果となっています。(ちなみに割増賃金不払いは2割ほど)

 

「若者の「使い捨て」が疑われる企業」と銘打ったキャンペーンや過重労働解消キャンペーン(事実上の「ブラック企業対策」と言っていいでしょう)の対象となっているのは、実際にそこで働いている労働者から相談が来たり、あるいは他の要素を総合的に勘案して行政として監督する必要があると判断した事業場でしょう。それらの事業場においてですら「違法な時間外労働」を行っているのは半数に過ぎません。

 

要するに今の「労働時間」規制に限って言えば、事実上の「ブラック企業対策」の対象となった事業場においても半数が「合法」的な労務管理を行っているということです。他の労働法令を含めても2割は「合法」となるわけです。したがってこれらの事業場に対しては「取り締まりの強化」では意味をなさないわけです。そもそも取り締まるべき法違反がないわけですから。

 

行政としてはこの8割の違反をゼロに近づける取り組みが優先されるのでしょうが、「ブラック企業対策」としての社会的な取り組みとしては、この2割(労働時間のみに着目するならば半数)の「合法」性をどのように捉えるかということが問われるのではないでしょうか。それは、これらも「違法」にしてしまって「取り締まりの強化」で対策をする、というのも一つの手段だと思います。

 

いずれにせよ、現行法のまま「取り締まりの強化」でブラック企業対策が有効とはあまり思えないですね、というお話でした。