お茶の間ブログ

労働関係を中心にゆるゆるとつぶやいていきます。

災害時または公務のための時間外労働

この記事 http://mainichi.jp/articles/20151205/ddl/k08/010/130000c が話題となっていますが、

 市職員、9月分給与100万円超も 水害対応で、残業最高342時間 /茨城

 常総市は4日、関東・東北豪雨への対応で残業し、9月分の給与が100万円を超えた職員が十数人いたことを明らかにした。水害が発生した9月10〜30日までの残業時間は最高で342時間だった。市議会で遠藤章江氏の一般質問に答え、傍聴席の市民から大きなため息が出た。

 市側の答弁によると、勤務可能な全492人の同期間の平均残業時間は139時間だった。給与100万円以上は主に係長で、部長らには管理職特別勤務手当を平均で11万9000円支給。残業代と手当を合計すると1億3000万円に達するという。

 遠藤氏は「もらう権利はあるが、全国から来たボランティアが無償で働いている中、市職員が多額の給与をもらうことに市民から疑問の声が上がっている」と指摘。給与が高額にならないよう、災害時の特別給与体系の創設を求めた。岡田健二・市総務部長は「全国の自治体の例を調べ、国とも協議したい」と検討する考えを明からにした。【去石信一】

 

 まだ市議会の議事録を確認できていないので、とりあえずこの記事をベースにしてみますが、まず何より問題にすべきは、過労死水準を大幅に上回る残業による職員の健康のことであって、それに言及せずに、なおかつ「傍聴席の市民から大きなため息が出た」とまで書いているので、去石記者が職員の生命や健康に対してどういう意識を持っているかを如実に示していると思います。

 

それはさておき、市の職員に対しても労基法は一部を除いて適用がありますので、その範囲内で労基法を遵守すべきなのはいうまでもありません。ですので、勤務時間は32条の範囲内でなければならず、時間外労働をさせるには36協定が必要になり、なおかつ36協定の範囲内でなければなりません。

 

しかし、33条で

(災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等)
第三十三条  災害その他避けることのできない事由によつて、臨時の必要がある場合においては、・・・労働させることができる。ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない。

 

第3項 公務のために臨時の必要がある場合においては、第一項の規定にかかわらず、官公署の事業(別表第一に掲げる事業を除く。)に従事する国家公務員及び地方公務員については、第三十二条から前条まで若しくは第四十条の労働時間を延長し、又は第三十五条の休日に労働させることができる。

 と規定されているので、今回の常総市の残業は「災害その他避けることのできない事由」と「公務のための臨時の必要がある場合」のどちらにも該当すると思います。「非常時にも労基法守ってたら滅びる」的なコメントもありましたが、もともと労基法でもそういう事態は想定しているので粛々と33条の規定に則ればいいと思われます。ただし、それに対する割増賃金の支払いが必要なのは言うまでもありません。

 

という前提がありながらなお

給与が高額にならないよう、災害時の特別給与体系の創設を求めた。

というのはどういうことなのでしょうね。

 

ここであるべき「改革」は、そのような緊急時に対応できるだけの体制作り (増員や日常業務量の見直し) であるはずで、過労死してもおかしくないだけ働かせておきながら給与を支払うのはけしからんという、ブラックな思想を浸透させることではないことだけはたしかです。