お茶の間ブログ

労働関係を中心にゆるゆるとつぶやいていきます。

労基法第3条とベルサイユ条約

hamachan先生が

 


昨日の講義で: hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳)

 

 

で、労基法3条に触れながら人種差別撤廃条約や国籍について戦後日本の「混乱」について解説されていました。

 

というわけで、労基法3条について『平成22年版 労働基準法 上巻 (労働法コンメンタールNo.3) 』の解説に目を通してみました。

 

(均等待遇)

第三条 使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。

 

そこには

 

なお、国籍による差別に関しては、国際的な沿革がある。すなわち、一九一九年のベルサイユ条約労働編第四二七条には、「各国が其法令により定むる労働条件に関する標準は適法に其の国の居住する一切の労働者に対する衡平な経済上の待遇を確保すべきこと」と規定されていた。この内外国民待遇の問題は、しばしば各国間でとり上げられ、国際労働機関においても、一九一九年第一回総会で「外国人労働者の相互的待遇に関する報告」が採択され、また、一九二五年第七回総会では、「労働者災害補償ニ付テノ内外人労働者ノ均等待遇ニ関スル条約」(第十九号) (我が国も批准している。) 及び「労働者災害補償に付ての内外人労働者の均等待遇に関する勧告」(第二五号) が採択されている。また、一九六六年第二一回国際連合総会において採択された「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(我が国も昭和四九年に批准した。) の第二条には「締約国、この規約に規定する権利が国民的出身によるいかなる差別もなしに行使されることを保障する。」旨規定している。

 

と記載されていました。国籍についは国際的な沿革があったのですね。

 

じゃあ、ベルサイユ条約労働編第四二七条ってなんじゃらほいと思って調べてみたら、いわゆる「労働は商品ではない」とか「同一労働同一賃金」について云々してましたね。 (「労働は商品ではない」はけっこう曲解されている気がしますが、それはまた別の機会に。)

 

 国籍が違うからという理由で賃金が異なれば「同一労働同一賃金」原則を貫徹できないということでしょうか。あるいは国籍差別をなくすために「同一労働同一賃金」原則を導入したんでしょうか。第一次世界大戦も影響しているのかもしれませんね。そこらへんの歴史的経緯はわかりませんが…。

 

で、現行の労基法3条では規定されていない「人種」による差別はどこで禁止しているのかしら、という疑問についても『平成22年版 労働基準法 上巻 (労働法コンメンタールNo.3) 』では

 

次に憲法第十四条にあって本条に規定されていない門地及び人種についても、本条の社会的身分に含まれると解される (門地について反対 吾妻「労働基準法」一七頁) であろう。

 

と答えていました。

 

 

ちなみに性別による差別については3条ではなく4条で禁止しており、

 

(男女同一賃金の原則)

第四条 使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。

 

これについては「賃金」だけなんですね。

 

男女の賃金差別は日本だけでなく国際的な問題だったようで、これもベルサイユ条約の「同一労働同一賃金」原則に影響しているようですね。

 

労働条件の差別的取扱については、ベルサイユ条約とかILO設立からの、国際的かつ歴史的沿革があり、日本国憲法はその流れの一部と見るべきなんでしょうかね。

 

 

あと、書いててどうでもいいことに疑問を持ってしまったんですが、なぜ3条では「差別的取扱」なのに4条では「差別的取扱い」と「い」が入ってるんでしょうね。本当にどうでもいいですが…。