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お茶の間ブログ

労働関係を中心にゆるゆるとつぶやいていきます。

過労死等防止対策推進法

11月1日から「過労死等防止対策推進法」が施行されます。

 

 

 

労働基準法では32条で1週40時間、1日8時間を超えて労働させてはならないと規定されており、残業代を払ってようが払っていまいがそれを超えて働かせることそれ自体が違法なものとなります。少なくとも法律上はそうです。

 

しかし実際には1週40時間、1日8時間を超えて働くことはザラにあります。

 

それを可能にするのが労基法36条に基づく労使協定です。この協定を締結し、労働基準監督署長に届け出ることによってその協定の範囲内で1週40時間、1日8時間を超えて働かせることができます。ただしその分の賃金は割増して支払う必要があります。

 

この労使協定は36条に規定されていることから「36 (サブロク) 協定」とも呼ばれます。

 

 で、この36協定の上限ですが、事実上ありません。労使が合意すれば何時間でも可能です。1日の時間外労働の物理的上限は15時間ですが (24時間−8時間−休憩1時間=15時間) 36協定でそのように締結すればそれは可能になります。

 

もっとも監督署に届け出るときに行政としての上限は設けていますが (1ヶ月45時間、1年360時間等) 、あくまで行政としての基準であって法的な拘束力はありません。以前1ヶ月200時間の時間外労働を36協定で締結していた企業があったことが話題となりましたが (東京新聞 2012年7月25日) 、そのような36協定を届け出た場合に、監督署は窓口で「指導」することはできますが、法的な拘束力があるわけではないので、形式的な不備がなければ受理せざるを得ません。そこで受理しなければ逆に監督署が違法行為をしたことになります。

 

という具合に、 (残業代さえ払えば) 法律上はいくらでも働かせることが出来るわけですが、人間、働き過ぎると死にます。いわゆる「過労死」というやつですね。

 

という今となっては当たり前なことが、実は当たり前ではなかった時代もあったんですね。過労死が社会問題となったのが今から40年ほど前のことらしいですが、勝手に社会問題になったわけではなく、遺族や弁護士や支援者らの地道な活動によって徐々に徐々に問題視されてきたようです。

 

長時間労働による脳・心臓疾患や、精神疾患に関する労災認定基準も、昔は今よりずっと厳しかったようですが、だんだん緩和されて来て、医学的な知見も加えられ、現在に至るという経緯があったようです。

 

そこらへんについては『過労死は何を告発しているか――現代日本の企業と労働 』(岩波現代文庫) に詳しく書かれています。

 

そして今年の6月に「過労死等防止対策推進法」が成立し、11月1日に施行されました。「調査研究等について定めることにより、過労死等の防止のための対策を推進」するという、なんとも中途半端な感じは否めませんが、「国は…過労死等の防止のための対策を効果的に推進する責務を有する」と定めたことには大きな意義があると思います。

 

なお、現在の労災認定基準は、発症する1ヶ月前に100時間、2ないし6ヶ月平均で80時間の時間外労働があれば、長時間労働と発症の因果関係が強く推定されます。これは労働時間そのものの長さよりも休息時間や睡眠時間が何時間以下になるとヤバいよというところから導きだされたものらしいです。なので、過労死の防止という観点からは、労働時間の抑制というよりも休息時間の確保を主眼とするのが正しい方向性なのではないかと思います。